『蚋(ぶよ)を漉して駱駝(らくだ)を飲む』¹ 出典は、新約聖書マタイによる福音書第23章24節「あなたたちはぶよ一匹さえも漉して除くが、らくだは飲み込んでいる」。 当時ブドウ酒は瓶(かめ)に入れていたが、保存は厳重でなかったためぶよの類が入ることが多かった。その小さいぶよは布で漉して飲むが、大きな不潔は平気で行う、の意。らくだはぶよに比べるとはるかに大きいからというだけでなく、ユダヤ人にとって不潔な動物とされていたので、ここに登場する。旧約聖書レビ記によれば、食べてよい動物はひずめがわかれ、しかも反芻(はんすう)するものであったが、らくだは反芻するがひずめが分かれていないので汚れたものとされていたのである(第11章4節)。 これは「小さい過ちを避けて大きい過ちに落ちる」とか「小事にこだわって大事を見落とす」、あるいは「小さな罪を咎めて大罪を不問に付す」などの意があるが、聖書の原意では、些細なことを激しく非難しながら、自分はもっと大きな悪事を平気で行っている偽善者に対する批判の言葉となっている。 (志子田光雄) |