『犬に悪名を与え絞殺せよ』¹ このことわざから派生したと思われることわざが多くある。例えば『犬を殺すには首を締める以外にもっと方法がある』²、『犬を絞殺しようとする人はまずその犬が気違いだと言う』³などである。これらのことわざが示すように、まずある犬を殺そうとする場合、例えば「あの犬は狂犬だ」と言えばよい。そうすれば、その犬を殺しても他人に批判されることはなく、むしろ感謝されるかもしれないからである。 ここから、人葬り去るには、まず悪い噂を立て、やがて社会から抹殺するのが早道だ、という恐ろしい解釈が成立する。 しかし、このことわざの本意は、たとえ嘘でも噂を立てられれば、その人は面目を失い、世間に顔向けが出来なくなるので、人の悪口を軽々しく言うことは控えるべきだ、という「たしなめ」である。 それにしても、このように悪名を与えて絞殺を企てる者こそ、狂犬のように恐ろしいと言わねばならない。 (志子田光雄) |