『曲がりがないのは長い道』¹ このイギリスのことわざに相当する日本のことわざとしては『待てば回路(甘露)の日和あり』がしばしば充てられる。どうして、両者は結びつくのだろう。 一読しただけでは、両者を結びつける意味の共通領域を見出すことがいささか困難である。一種の判じ物である。今まで納得のゆく説明に出会ったことはない。 「長い」とは物理的な長さを述べているだけでないことは明白であり、これは距離に対する心理的な反応を示していると考えられる。すなわち、曲がりのない直線の道は移動に伴う景色の変化が乏しいことと、行く先が見えているのになかなか近づかないように感じるのは良く経験することである。その上で、どこまでも真直ぐで曲がらない道はないのだから、飽き飽きすると思われる直線の長い道も、やがては曲がり角にさしかかり、新しい視野が開けることもあるであろうということになる。ここで始めて、待つことには報いがあると言う点で、日英のことわざは結びつくものと考えられる。 両者を結びつけたこのような先人の賢察には、しばしば苦労させられことがある。 1. It is a long lane that has no turning.(志子田光雄) |