『ラテン語を話す女と酒好きの女は料理では役立たず』¹

 ラテン語は中世からルネッサンスにかけて、書き言葉だけでなく、話し言葉としても、教会や学問の世界では生きていた。ラテン語を話せる女とは学問好きの女であり、話せるまでにラテン語を習得するにはかなりの時間がかかったであろうし、勉学に明け暮れては当然家庭的な関心も薄く、料理の技術が育たなかったと考えるのは容易である。

 酒好きの女は、飲みたい一心で手の込んだ料理はせず、せいぜいチーズを切る程度で済ますうちに、結局料理の腕前は駄目になるというのである。原文では酒はワインとなっているが、アペリティーフ(食欲増進酒)から魚料理のための白、肉料理のための赤(そのような区別は無いと言う人もいるようであるが)、そしてデザートの前のシャンパン、食後酒(ディジェスチフ)としてのリキュールなど、酒が酔うためではなく料理を引き立たせるために存在するようなフランスならではのことわざである。 

 しかし、筆者の乏しい経験では、料理はかなり知性と相関関係があり、また酒に理解のある女性は、料理も上手であると思うのだが、如何であろうか。


1.     Femme parlant latin,
   Femme aimant vin,
   A la cuisine ne valent rien.

(志子田光雄)