『二つの腰掛の間では地面に落ちる』¹ Golden mean「(黄金の)中庸」という言葉がある。「極端な、あるいは衝突する諸決定の間の中間の道を選ぶ懸命な行動の道」であるが、この「憂き世」では、何事であれ相対立する二つの勢力の間に立って中庸を守るということは至難の業のようである。いずれに偏することもせず、両者と良い関係を保とうとしても、結局はどちらからも誠意を疑われることが多いからである。 また、このことわざは、二つのものを同時に追い求めても、結局はいずれも得られない、すなわち「二兎を追うものは一兎をも得ず」²ということをも意味する。(ちなみに「二兎…」は日本のことわざではなく、オランダの人文学者、エラスムスの『格言集』Adagiorum Opus (1500)所載のラテン語によるものが出典と言われている)。 あるいは、二つのもののいずれかを選ぶ際、決断力の欠如のために決めかねても、両者を失うことがある。したがって「一事に集中せよ」という意味にも解される。 本邦の「虻蜂取らず」「花も折らず実も取らず」に相当するが、標記のイギリスのことわざは人間関係を示唆して、より切実な響きを持つ。 (志子田光雄) |