『立ち聞きする者はよく自分のことを聞く』¹ 立ち聞きする者は、好奇心から他人の秘密を探ろうとするのであるが、そんなときに自分のうわさ話も耳に入ってきて驚かされることがある。それも大抵は陰口、悪口の類であり、好奇心の満足どころか、愕然とさせられることが多いというのである。 立ち聞きには、自らが立ち聞きするだけでなく、他人の耳を借りることもある。自らの保身のために為政者が古来行ってきたことである。このような場合にも自分の悪口がよく耳に入ってくる。なぜならば、耳として利用される人物は大抵嬖臣あるいは取り巻き連中であり、彼らは自分の主人の意向を窺っているので、主人の嫌いな人物が主人の悪口を言っていると報告し、主人の嫌悪がますます客観的に正しいものと信じ込ませるように仕向けるからである。 いずれにしても、立ち聞きすれば自分の悪口はよく耳に入ってくるのである。 |