『この世は舞台、人は皆それぞれの役を演ずる』¹

 ギリシャ語のことわざ「世界は舞台、人生は登場」に由来する。イギリスでは16世紀中期にことわざとして成立しているが、シェイクスピアがこの趣旨を幾つもの作品の中で展開していることは有名。喜劇『お気に召すままでは「この世はすべて舞台、男も女もみな役者に過ぎない」と言い、マクべスには「人生は歩く影法師、あわれな役者だ。束の間の舞台の上で威張りくさって歩いてみるが、出場が終われば耳を傾ける者もない」と言わせている。

 もし、人生が舞台であり、人は俳優としておのおの与えられた役割を演じなければならないのなら、その役に徹し切る演技が必要であろう。『ハムレットで、旅回りの役者がエルシノアの城を訪れ、王子の求めに応じて、座長が、トロイ落城の際に王を殺された王妃の嘆きの場面を演ずる。その目に涙を浮かべての迫真の演技に、ハムレットは、「ただの絵空事に涙を流すとは」と驚くが、この人生においても、われわれには、各々に与えられた役割を、このような迫真の演技をもって行うことが求められていると言えよう。

1. This world is a stage and every man plays his part.

(志子田光雄)