『この世に良い女は二人しかいない』

 二人の良い女とは、この後に続く言葉が明らかにする。「一人は死んで、他方は見つからない。」¹言い換えれば死んで追憶の中に生きている女と、まだ見ぬあこがれの女性だけが良い女、ということになる。

 どの国でも女性に関することわざは驚くほど多い。しかもその多くが徹底的な女性攻撃である。ことわざの多くが長い父権制社会において男性によって作られ、伝えられてきたからであろう。

 「女とブドウ酒は男の判断を狂わせる」(スペイン)「女の忠告に従うものは地獄に落ちる」(ヘブライ)、「ある男が義母の墓参をしたところ、倒れてきた墓石の下敷きになり死んだということから死んだ女も信用するな」ギリシャ・ラテン)などなど。

 しかし、「女は若い男にとっては恋人、中年の男にとっては話し相手、年寄りにとっては看護婦」²イギリス17世紀前期)である。高齢化社会にあっては、男性より長生きし、結果的には「看護婦の」役をする犠牲的な存在であるので、「女は必要悪である」³(フランス)などと女性の悪口は言えない。

1. There's only two good women in the world; one is dead, the other not found.
2. Women are young men's mistresses, middle-aged men's companions, and old mane's nurses. (注:現代のスペリングと少々異なる)
3. La femme est un mal nécessaire.

(志子田光雄)