『10月は良い月』

 この後に『親切な突風が豚に樫やブナの実を吹き落とす』¹と続いて完成する。これはイギリスの16世紀頃のことわざであるが、秋の嵐が吹き落とす樫、ブナ、楢などの木の実は当時豚の餌にされた。

 ことわざの世界は大抵太陰暦であるので少々ずれがあるが、10月は落ち葉の季節。『10月の木の葉落とし』は日本のことわざであるが、フランスにも『10月の風は葉を枯らす』と言う表現がある。そこから『度々泥酔、滅多にしらふでない者は、10月の木の葉のように散り去る』²と言うことわざが成り立ち、これは本邦の『大酒遊芸は末の身知らず』に相当する。

 季節に関する俚諺は洋の東西同じものが多く、陰暦10月のいわゆる小春日和を描写した『十月は小六月』は本邦、西洋ともまったく同一の表現である。

 10月は英、独、仏それぞれ OctoberOktoberOctobre となるが、ラテン語の8を表すocto が語源。すでに述べたように、ローマの暦では、3月から新年が始まったので、10月は8番目の月であったことに由来する。

1. Good October, a good blast to blow the hog acorn and mast.
2. Often drunk and seldom sober falls like the leaves in October.

(志子田光雄)