『闇夜はキューピッドにとって昼』¹ ローマ神話でキューピッドは愛の女神ヴィーナスの子とされ、愛の神である。ギリシャ神話のエロス(愛の神)に相当し、ラテン語のアモル(愛)となり、さらにクピド(愛欲)と呼ばれるようになったものである。翼の生えた裸体の美少年の姿で描写される。弓矢を携え、母ヴィーナスの命ずるままに、あるいは戯れに矢を放つが、心臓を射抜かれると恋心が生じ、神々も人々も苦しむ。 キューピッドはしばしば目隠しをしたり、盲目であるように描かれる。これは『恋は盲目』²の象徴である。恋は正しい判断を失わせ、「彼女にほれれば彼女は見えない」ということわざがあるように、相手の欠点も見えなくなる。さらに恋に熱中すると思慮分別は失われ、人目もはばからず、常識では律し切れない狂気の沙汰に及ぶこともある。 しかし、恋はやはり人目を忍び、多くは闇の力を借りることになる。暗闇にまぎれれば、思いのたけも語れるというものである。したがって闇夜はキューピッドの活躍の場となる。 本邦の『暗がり様(さま)は粋様(すいさま)』に相当する。 |