『豚の耳で絹の財布は作れない』¹ 豚はイノシシから家畜化されたもので、中国では4800年前、エジプトでは3500年前から飼育されていたという。 ヨーロッパイノシシを先祖とするヨーロッパ種の代表はヨークシャー種とバークシャー種であるが、このイギリスのことわざの豚は前者であると推理する。なぜならば、バークシャー種は黒色であるのに対し、ヨークシャー種は白色豚であり、毛は白色軟毛であるからである。 一般にこのことわざは、豚の耳の形状がやや財布に似ていることによると説明されているが、しかし、耳に生えている光沢のある柔らかい白色の毛が絹の光沢や肌触りに似ていることをも見逃してはならないであろう。 このように、外見は似ていても、豚の耳で絹の財布を作ることはできないということであるが、要するに正しい材料でなければ良い物は作れない、悪い材料では精妙な作品は作れないという意味である。 敷衍(ふえん)して、人の本性は変えられない、という意味にも用いられる。 |