『思い邪なる者に恥辱あれ』¹

 イギリスの最高勲章であるガーター勲章に刺繍してある銘である。

 ガーター勲章制定事情に関しては三つほど説があるが、一般に流通しているのは次のようなロマンティックな物語である。宮廷舞踏会で、ソールズベリー伯爵夫人がイギリス王エドワード三世(治世1327−1377)と踊っていたとき、伯爵夫人(一説にはエドワード三世の恋人と言われている)の靴下止め(ガーターが落ちてしまった。王は夫人をその恥辱から救うため、すぐさまそれを拾い上げて自分の足にはめ、それを見て意味ありげに微笑していた人々に標記の言葉を言ったというのである。王は、これを機会に、1348年にガーター勲章を制定し、伯爵夫人のガーターと同じ濃紺のビロードの靴下止めにこの金言を文字通り金文字で縫い取らせた。ちなみに、この勲章は左脚の膝下に着用するが、他にもこれに付随するマントと頚飾章がある。

 この言葉の原文はフランス語。当然のことながら、フランスのことわざ集にしか見当たらない。意味は文字通り、何かの事柄を邪な思いで見る者、邪念を抱く者があれば、その者に恥辱があるように、ということ。

1. Honni soit qui mal y pense.

(志子田光雄)