『すべての道はローマに通ず』¹ 古代ローマの地図を広げてみれば、有名なアッピアをはじめ数多くの街道がローマの中心から四方八方に延びている。「ローマは一日にしてならず」²とあるように、全地中海世界を圧制するまで約五百年の歳月を要し、その間軍事的経済的目的を達成するため、首都ローマからその領土の末端まで街道を広げた。高低差を無くすため山を削り、橋を架け、しかもできるだけ直線でというコンセプトに基づく石畳の道は、二千年後の現在も健在である。 ローマに通じているのは街道だけではない。ヘレニズム文化はこの街道を通って世界に広がり、ユダヤ教に発したキリスト教も当時の世界の中心地ローマを目指して西進し、ヘレニズムの世界を精神的に征服して、改めてローマから全世界へと伝えられた。文芸復興の波もしかりであり、そのため西洋文明とそれに基づく現代文明のほとんどすべてはローマに源流を持つと言えるのである。 ことわざとしては、どの道もローマに通じるということから、手段は異なっても行き着く先は同じ、同一目的を達するにも方法はさまざまある、などの意味に用いられる。 |