『ワラ抜きでレンガは作れず』¹

 レンガは通常粘土を焼いて作るが、古代エジプトでは、粘土にワラを入れてこね、天日で乾かしていわゆる日干しレンガを作った。ワラを入れることによって割れにくくしたのであるが、そのためワラはレンガ作りに欠かせない材料であった。

 そこから、「ワラ抜きレンガを作る」ということは「必要な資材なしに物を作る」ということになり、結局「不可能なことをする」とか「無駄なことをする」の意となる。日本のことわざの「ざるで水を汲む」に相当。

 出典は旧約聖書出エジプト記4章7節。紀元前1300年ごろ、エジプトで奴隷状態にあったイスラエルの民は、建築用のレンガを作らされていた。ある日、民の指導者らが、エジプト王パロに2,3日荒野に出て神に礼拝を捧げる許可を願い出たところ、パロは怒り、民を追い使う者に対し「これからは、今までのように、彼らにれんがを作るためのわらを与えるな。わらは自分たちで集めさせよ。」と言ったという言葉による。

1. You cannot make bricks without straw.

(志子田光雄)