『5月に結婚すると常に後悔することになる』¹

 「五月の花のように(fresh as flowers in May)」とは元気はつらつとした様子を表現する言葉であり、「美しいものの中でも5月は美しい」²ということわざがあるように、百花繚乱、自然における再生の季節で、5月はおおむねどこの国でも美しい月である。

 それにもかかわらず、標記のことわざがあるのはどうしてであろうか。古いラテン語のことわざには「5月に結婚するのは不幸であると人々は言う」³とある。それはおそらくオヴィディウスの『行事暦』にもあるように、ローマ時代以降5月は死者に対して喪に服す月となり、レムリア祭(死霊祭)がこの月の9、11、13日に行われたため、この月は結婚に縁起の悪い月とされたようである。迷信に過ぎない。

 シェイクスピアは『恋の骨折り損』で「恋、その月は常に5月なのだ(Love, whose month is ever May.)」(4幕3場)と言っているように、5月は恋の月である。

1. Marry in May, repent alway.
[類] Mary in May, you'll rue it for aye.
   Of all the months 'tis worst to wed in May.
2. Of fair things the month of May is fair.
3. Mense malum Maio nubere vulgus ait.

(志子田光雄)