『汝の馬車を星につなげ』¹

 汝自身と一切合財を積み込み、人生の旅路を進む馬車を地上を駆ける馬につなぐのではなく、悠久の天空を進む星につなぐべしという壮大なイメージである。

 星は古来暗闇の力に対抗する精神の象徴として用いられてきたが、古代エジプトの象形文字では「原点への上昇」を意味し、向上、教養、教師などを表すいくつかの文字の一部を構成していた。また西洋では一般に、星は不滅の魂、精神の導き手としての意味を担ってきた。従って馬車を星につなげということは、世俗を超越し、心に高邁な理想を持ち、小成に安んじることなく大望を抱け、という意味になる。 

 これはアメリカの思想家・詩人ラーフ・ウォルドー・エマーソン(1803−82)の『社会と孤独』の中にある言葉である。この後に「ただ暮らしに役立つだけの下等な仕事に沈み果てるな―神々の奨め尊ぶ美徳なる正義、愛、自由、知識、公益のために働け」とある。

1. Hitch your wagon to a star.

(志子田光雄)