『1月には火のそばの壷の水も凍る』¹

 北欧はもとよりイギリス、ドイツ、それにフランスの大部分は北海道の北端より緯度が高い。標記のイギリス16世紀のことわざが示すように、1月は暖炉のそばの水も凍るぐらいの厳寒期である。その「1月が過ちを犯せば5月が咎めをうける」²、すなわち1月が温暖すぎれば5月まで冬の天候が続くことになるので1月は厳寒こそ望ましい。

 1月は、英独仏語でそれぞれJanuary, Januar, janvierであり、いずれも「ヤヌス(Janus)に捧げられた月」を意味するラテン語より派生したものである。ヤヌスはローマ神話で天国の門の神であり、家の入口や門戸の守護神でもある。顔が前後両面にあり、過去と未来、事物の前後、始めと終わりを同時に見ることが出来る。古い年と新しい年の両方をつなぐ1月の名称としてふさわしい。しかし暦の歴史は複雑で、1年の最初は古代ローマでは3月、キリスト紀元の暦法採用後はクリスマス、イースター(復活祭)等さまざまあったが、1582年ローマ教皇グレコリオ13世がいわゆるグレゴリオ暦制定以後、1月を1年の最初の月、その1日を元日とするようになった。

1. January freezes the pot by the fire.
2. January commits the fault, and May bears the blame.

(志子田光雄)