『空腹は最高のソースである』¹ ギリシャの哲学者ソクラテス(前470?−399)の言葉「食物の最上の調味料は飢えであり、飲み物のそれは渇である」²、あるいはローマの哲学者キケロ(前106−43)の言葉「飢えは最上の調味料だ」³が出典。 ソースの語源はラテン語のsal(塩)から派生したsalsa(塩漬物)にある。一般にソースは液状、半流動体の調味料の総称で、既にローマ時代から存在したようである。 ソースの多様さとおいしさでフランス料理は世界的名声をかちえたと言えるが、その基本ソースは鶏、野菜、魚用のソース・ベシャメル、ブラウン・ソースの基本となるソース・エスパニョル、用途のもっとも広いソース・ヴルーテの三つで、これを基に七百近い派生ソースがあるといわれている。まさに食の文化の華である。 絶妙な味のソースに出会ったときの喜びは生の充足感をひとしお高めてくれるが、第二次世界大戦直後戦後の飢餓体験を持つ筆者にとっては、飢えほど最高のソースはないと実感している。 |