獅子の尾より犬の頭になるほうがまし』 

 人は、人生の岐路に立つとき、自己の能力を考慮しつつ,どの方向に進み、どのような場に身を置くべきか思い悩むものだが、このことわざも一つの在り方であると言えよう。

 自己の所属する集団がたとえ一流であっても,その中の激しい競争に乗りきれず,常に他人の後塵を拝して苦しむよりは,小なりといえども人の先頭に立つ方が心安らかである、とする態度である。

 しかし人の世はさまざまであり、これとは全く反対の『狐の頭になるよりもライオンの尾となれ』をとる人もいる。「寄らば大樹の陰」をとる安定志向型の人である。しばしこのタイプの人は堕落、悪化すると「虎の威を借りる狐型」になる。

 標記のことわざには同趣のものが非常に多い。ジュリアス・シーザーがゴールに行ったときの言葉とされる『ローマの二位よりも村の一位につくほうがよい』やドイツのことわざ『大きな下僕ほりも小なりといえども主人がまし』などがあげられる。

 『史記―蘇泰伝』にある有名な『鶏口となるも牛後となるなかれ』に相当。

1. Better be the head of a dog than the tail of a lion.
2. Choose rather to be the tail of a lion than the head of a fox.
3. Lieber in einem Dorfe der erste als in Rom der zweite.
4. Besser ein kleiner Herr als ein grosser Knecht.


(志子田光雄)