『追従は友を作り、真実は敵を生む』¹

 人はその人間性のゆえに苦労する。人間性は、人間(じんかん)性、すなわち人と人との間にあってはじめて確立するからである。人は、生きることのエネルギーの大部分を、この「じんかん性」の円滑な関係を作り出すために費やしていると言っても過言ではない。

 その関係の潤滑剤のひとつに追従がある。追従は文字通りには「人の後に付き従うこと」であるが、もう少し積極的には「こびる、おもねる、へつらう」となる。標記のことわざはローマの詩人テレンテウスの口から出たものであるが、その前半が示唆するように、追従されて怒る人は少ない。

 一方,フランスのことわざに「真実ほど人の気に障るものはない」²とあるように、人はだれしも真実とはいえ痛いところを突かれれば腹を立てる。すでに意識し、心の奥底で悩んでいる事柄について指摘されるならばなおさらである。したがって、「すべての真実が口に出して良いものではない」ということわざも生まれる。

1. Obsequium amicos, veritas odium parit.
[類]
 
As truth gets hatred so flattery wins love (or friends).
 (真実が憎しみを招くように、追従は愛(友)を得る。)
 
Truth finds foes where it makes none.
 (真実は自らは敵を作らないのに敵が出来てしまう。)
2. Il n'y a que la vérité qui offense.

(志子田光雄)