『三月はライオンのようにやって来て、子羊のように去って行く』¹ これは英国のイングランド地方のことわざであるが、北方のスコットランドでは「三月は蝮(まむし)の頭をもってやって来て、孔雀の尾を広げて去って行く」²とある。三月は、上旬の寒さが厳しくても、下旬にはのどかの陽春となる、の意。しかし「空模様が多様な三月」と言われるように、寒暖が不順に訪れ、晴天が少なく、「一ブッシェルの三月のほこりは国王の身代金の価値がある」³といわれているように、ほこりが立つくらいの晴天の日を人々は有難がるほどである。「マーチ・ウインド」(三月の風)と呼ばれる強風が吹き、一年中で一番船舶の遭難が多い月でもある。 三月は、英独仏語でそれぞれMarch、 Marz、Marsであるが、いずれもローマ神話の軍神マルスMartiusにちなむ。ローマ建国者とされているロムルスは自らをマルスの息子とみなし、その名誉を称えて、当時の一年の最初の月であった三月にその名をつけたと言われている。 |