『一冊の本しか読まない者は怖い』¹
ラテン語の「一冊の書物の人に用心せよ」²、あるいは「わたしは一冊の書物の人を恐れる」³が出典。 一冊の本しか読まない者は、幾つかの意味において怖い。まず、そのような人はその本の専門家であるので、その本に関する限り他の人は到底太刀打ちできないので怖い。同時に、このような人はその一冊の本を熟読玩味、内容を自家薬籠中のものとしているため、もしそれを自己の武器として論議に参加してくる場合には、論議の基盤が固いので圧倒的な強さを発揮し、雑多な本を乱読し、知識をかき集めただけの者などは到底かなわない場合もあるので怖い、ということにもなる。 また、教条主義的に一冊の本を唯一の依るべきものであると考え、一切をそれによって判断し、行動しようとする者も恐ろしい。 しかし、この価値の多様化の現代にあっては、多分一冊(わずか)しか本を読まないような無知の人も怖いのかもしれない。 |