『父親が青いぶどうを食えば、その息子の歯が浮く』1
『親の因果が子に報い』に相当する。ドイツのことわざ『親が山リンゴをたべれば、子の歯が浮く』2も同様である。
もともとはイスラエル民族のことわざであり、旧約聖書エゼキエル書第18章2節にある『先祖が酢いぶどうを食べれば子孫の歯が浮く』が出典と考えられる。イスラエルにおける罪の社会的連帯責任にその基があり、遊牧民として絶えず他民族と争う危険性があった時代には、団体行動を律するために必要不可欠な観念であった。モーセの十戒の第2戒には「わたし(神)を否むものには、父祖の罪を子孫に三代、四代にまでも問うが、わたしを愛し、わたしの戒めを守る者には、幾千代にも及ぶ慈しみを与える」(出エジプト記第20章18節)とある。
イスラエルの民が定住するようになってからも、外敵の襲来などの苦難に出会うごとに、民衆は、自分達は罪を犯していないのにこのような苦しみを味わうのは、父祖伝来の罪のゆえだと言ってこのことわざを持ち出したが、そのたびに預言者は罪は個人的なものであるといういわゆる個人罪責論を説いて、一人一人の悔い改めをうながした。
西洋のことわざとして独立してからは、そのような宗教的な意味を失ったが、自分の意志で生まれてきたわけではなく、親を選ぶことも出来ずに自分の親に密着して生きる子供は、多分に養育する親の生き方によって大きく影響を受ける。だから、親が失敗すれば、その結果は子供が負うことになる。いろいろな意味で『親が罪を犯せば、子がその償いをしなければならない』3のだ。
1. Les peres ont mange des raisins verts, et les dents des fils
ont ete agaces.
2. Wenn die Eltern Holzafel essen, werden den Kindern die Zahne davon stumpf.
3. Wenn die Eltern sich versudingen, musssen die Kinder dafur bussen.
(志子田光雄)
|