『跳ぶ前に見よ』1 人は跳躍して前方に進む時、着地するまで、身体が空中にあるうちは意のままに方向を変えることは困難であり、まして空を蹴って反転し、跳躍地点に戻ることは不可能である。従って、軽率に跳ぶならば、「地獄」に転落することもありうるのである。 これは、いわば行動とそれを促す判断力との関係についてであるが、ここで思い出されるのは、「ドイツ人は歩く前に考え、イギリス人は歩きながら考え、フランス人は歩いた後に考える」という国民性の描写である。これにはヴァリエーションがあり、イギリス人に関しては同一であるが、「フランス人は考えてから走り出し、スペイン人は走ってしまった後で考える」などがある。 どうやら、どの国民がこれを言うかによって異なるようであるが、この諺では、要するに、「行動を起こす前に熟慮する」ことに評価が置かれているようである。 標記のことわざは、本邦の『念には念を入れよ』あるいは『転ばぬ先の杖』に相当するかもしれない。 (志子田光雄) |