『年老いても身を保てるように青春には節制せよ』1
シェイクスピアのソネット(14行詩)の中で、老年の自分を省みてくれなくなった恋人に宛てて、恨みがましく次のように述べている。
あなたは私の中に火が燃え上がるのを見るであろう
若き日の灰の上に横たわり
そこを息を引き取る死の床として、
養われてきた物により消滅させられてゆくのを。2
ここでは燃え上がる老いの恋の火が焚き火に譬えられ、その火は自らの青春の燃えかすである灰の上で、次第に消耗してゆき、最後に燃え細った薪は、ますます増えて行く灰の中に崩れ落ちて埋没し、火は消されてしまう、というのである。
一般に、青春に激しく燃えれば燃えるほど、その燃焼の結果の灰は急速に多くなり、その灰に埋もれて窒息させられてしまう最後も早くなるのだ。
平均的な人の寿命の長短にはさほど大きな差はないと考えられるが、その生き方には「太く短く生きる」か、「細く長く生きる」かの違いはある。
青春に節制すれば、老年においても長くその生を保ち得るであろう、というのが標記のことわざの意味であることは解説を待たないであろう。
1. Spare in youth to maintain thee in age.
V. Spare when you’re young and spend when you’re
old.
He that spares when he is young may the better
spend when he is old.
2. In me thou see’st the glowing of such fire
That on the ashes of his youth doth lie
As the death-bed whereon it must expire,
Consumed with that which it was nourished
by:
(Sonnet 73)
(志子田光雄)
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