『心配は猫をも殺す』

 世に愛猫家は多い。しかし、あの一見おとなしそうに見えていながら、内に油断ならない野性味を隠している性質や、コケティッシュな態度のために、どうしても好きになれないという人もいる。

 「猫は炬燵で丸くなる」という歌があるように、本来は南方産である。初め狩猟に用いるために馴致されたが、古代エジプトではすでに飼い猫になっていた。西欧では10世紀頃にはもうネコ保護条例があったというが、一般的に飼い猫として飼育されたのは16世紀以降といわれている。
 
 フランスに『すべての猫を魔法使いだと思ってはならぬ』(一部を見てすべてをそうだと判断してはいけない)ということわざがあるように、猫を魔性のものとする考えが古くからあった。魔法使いの使い魔となったり、猫自身も魔法を使うと考えられていたのは、日本の鍋島、有馬の猫騒動の例を引くまでもなく、洋の東西を問わない。

 『猫には九生あり』とある。九つの命を持つ、すなわち長生きをする猫をさえ、心配は殺してしまう。『心配は療薬にならず』とか『心配は白髪のもと』どころか、心配は致命的なものであるという意味である。

1.  Care will kill a cat.
2.  Il ne faut pas faire passer tous les chats pour des sorciers.
3.  A cat has nine lives.
4.  Care is no cure.
5.  Care brings grey hair.

(志子田光雄)