『学問は性格となる』¹

  ここで「学問」と訳したラテン語の studia は、正確には「勉強」の方がよいかもしれない。しかし、16世紀イギリスの哲学者フランシス・ベイコンは、このことわざを引用して書いた『随筆』のなかの一章 “Of Studies” の内容からすれば、「学問」と読む方がおもしろいし、邦訳もそのようになっている。

 ベイコンは次のように述べている。「学問は楽しみと飾りと能力の錬磨に役立つ。楽しみとしての主な効用は一人閑居しているときに、飾りは談話のときに、能力の錬磨としては仕事に対する判断と処理において役立つ。」

 しかし、それだけではない。studia のもともとの意味は「勤勉」にある。学問の修得には勤勉が必要であるが、孜々として倦まずにあることを続けているなら、それはやがてその人の性格になるというのである。

 周りをよく観察してみるがよい。その人がなにを学んでいるかによって、特にその学問が高度であればあるほど、その人の思考、行動に大きな影響を与えているのを発見するであろう。

1.  Abeunt studia in mores.
  A man’s studies pass into his character.


(志子田光雄)