『鞭を惜しんで子供を悪くせよ』1 昭和22年3月31日施行の「学校教育法」第11条に「校長及び教員は、教育上必要あると認めるときは、監督庁の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲罰を加えることが出来る。ただし、体罰を加えることはできない。」とある。 爾来、鞭で殴るなどという体罰は消え去り、「教師が生徒を戒め教えるために使うむち」という意味での「教鞭」の概念も薄れ、「教鞭を執る」という表現すら若い人には次第に理解されなくなってゆくことが予想される。 標記のことわざの出典は、旧約聖書箴言第13章24節「鞭を控えるものは自分の子を憎む者」にあり、子供は叱るべきときに叱らなければ立派な大人にはならない、という意味である。『金は打ち延ばされねばならず、子供は鞭打たれねばならない』2のである。 本来教育とは教師と生徒との間に、知的、人格的、その他もろもろの点で落差があって初めて可能である。その上で、教師の生徒に対する愛情と、生徒の教師に対する信頼があって完成すると言えるであろう。生徒の教師に対する信頼があるときには、教師が厳しく鞭打つことも本当の愛情として受け入れられるのである。 (志子田光雄) |