『美人の妻を持った者は目が二つでは不足』

 「弱きものよ、汝の名は女なり」と言って母の不貞に悩んだハムレットは、愛していたオフェリアに対しても「もしお前が貞淑で美しいなら、その貞淑を美と付き合わせぬが良い。なぜなら、美はたちまち貞淑を堕落させてしまうから。」と言う。

 『美貌と貞節が両立するのは稀(まれ)』とあり、また『美人とブドウ園と無花果の木は管理が困難』など、美しい妻の浮気心に対する非難のことわざは非常に多い。

 だがシェイクスピアの『オセロ』のケースもある。黒人将軍オセロの妻、白人のデズデモナは貞淑そのものであった。しかし、悪人イアゴーの奸計にかかり、オセロは自分の「額に角が生えた」(当時、妻を寝取られた夫の額には角が生えると言われていた)と信じて、最愛の妻を絞殺してしまう。その直後イアゴーの奸計は暴露され、オセロは悔恨のあまり自ら命を絶ってしまうが、オセロにとり、二つ以上の目が必要であったのは、美しい妻にではなく、妻の貞節を疑わせた悪者に対してであったのだ。(美しい妻たちの弁護のために一言)。

1.  Who has a fair wife needs more than two eyes.
2.  Beauty and chastity (or honesty) seldom meet (or agree).
3.  A handsome wife, a vineyard and a fig-tree are hard to be kept.

(志子田光雄)