『噂話と嘘は連れ立って行く』1

 『火の無いところに煙は立たぬ』2ということわざ通り、何らかの事実がなければ、風説の流れることはありえない。しかし『「だとさ」は半分嘘』3と言うことわざがあるように、噂話に嘘はつきもの。

 噂話は、自分が確認したことでなくても、さも見たかのように得々として話すことが可能である。しかも大抵は自分に利害関係が無い場合なので、興味本位に話は拡大され、「…だろう」が「…だ」となり、やがて本邦のことわざにあるように『人の噂は倍になる』。そして『下衆の口には戸を立てられない』だけに恐ろしい。

 さらに『悪い噂は良い噂より脚が早い』4。早いだけでなく、悪い噂は長く記憶され、良い噂はたちまち忘れ去られる。『人の噂も七十五日』は良い噂にのみ当てはまると言える。

 A・ピアスは『悪魔の辞典』で、「噂」を次のように定義している。「(RUMOUR)【名詞】人の評判を抹殺しようとする暗殺者達が好んで用いる武器」。

1. Gossiping and lying go hand in hand.
2.   There is no smoke without fire.
  Il n’y a pas de fumee sans feu.
  Wo Rauch ist, da ist auch Feuer. [ Kein Rauch ohen Feuer. Wo Rauch aufgeht, muss Feuer sein.]
3. ‘They say so’ is half a lie (or liar).
  To have heard say is half a lie.
4.   Mauvaise renommee va plus vite que la bonne.

(志子田光雄)