『金を貸して失う、が馬鹿なやり方』1 シェイクスピアの『ハムレット』の一場面で、廷臣ポローニアスは、フランス留学に出発しようとする息子レアテーズに数々の忠告をするが、その中で「金の貸し手にも借り手にもなるな。金を貸せば金も友も失う。金を借りれば倹約の心が鈍る。」と言う。この忠告は、当時よく知られていたことわざに基づくものであろう。『友人に貸す者は二重に失う』2、『金を貸す者は誰でも二重に失う。すなわち、友と金』3とあり、『金を貸して友を失え』4というものもある。 金を貸せば友と金を二つながらにして失うことになる理由は、金を借りた友人が返済できずに貸手の前から姿を消してしまう場合と、返済を求めているうちに友情にひびが入ってその友を失ってしまう場合と二つある。そして『金の貸借は友情を損なう』5だけならまだしも、『貸す時は友達、返すときは敵』6となり、『金は友人を敵に変える』7るからである。『敵を作りたければ金を貸してその返済を求めよ』8という表現があるくらいである。 本邦にも『近い者には金を貸さぬもの』、『金を貸したが縁の切れ目』、『金の貸し借り不和のもと』など同趣のものが多々ある。 (志子田光雄) |