『時を捉えるには前髪をもってせよ』

 「時」は、古来、前額には髪の毛があるが頭部は禿げている老いた神(女神の場合もある)に擬人化されてきた。そこで、時(あるいはチャンス)が前方より疾走して近づいてくるとき、油断なく待ち構えていてその前髪をむんずと掴まえなければ、後頭部に手がかりの毛髪が無いので、通り過ぎた後では捉えそこなってしまう。『好機が過ぎてから嘆いても遅すぎる』ということになるのである。

 問題は、時間の流れに乗って次々と目の前に現れては過ぎ去って行く事象のうち、どれが本当のチャンスであるかを識別する能力をいかにして身に付けるか、ということである。

 ことわざに『幸運は少なくとも一度は誰の門をもたたく』とある。しかし『機会が二度門をたたくことはめったにない』ともあるので、常に目を見開いていなければならない。

 日本では『運は天にあり』と言い、どちらかといえば消極的、受動的であるが、西洋では「前髪を捉える」と、きわめて積極的な姿勢を示している。

 日本語のことわざ『今日の後に今日無し』がこれに近い意味をもつといえるであろう。

1.  Seize (or take) time (or an occasion) by the forelock.
2.  It is too late to grieve when the chance is past.
3.  Fortune knocks at least once at every man’s gate.
4.  Opportunity seldom knocks twice.

(志子田光雄)