『することが何も無い者は困難な仕事をしている』

 ワーカホリック(workaholic、仕事中毒)という語が辞書あるいは事典に市民権を得てからかなりになる。アメリカのW・オーツ博士が『ワーカホリックの告白』で最初に使用した語であり、ワーク(仕事)とアルコホーリック(アルコール中毒)の合成語である。働かずにはいられない状態は、自覚症状は無いが明らかに病気であるというのである。

 これは現代的症状であるが、標記のことわざが示すように、人間は昔からなすべき仕事が無いと苦痛を感じてきたようである。アダムが禁断の木の実を食べて神の怒りに触れ、「お前は顔に汗を流してパンを得る」(創世記3章19節)と命じられて以来運命的な状況である。

 ゲーテも『若きウエルテルの悩み』のなかで、「たいていの人間は大部分の時間を、生きるために働いて暮らす。そしてわずかばかり残された自由は、それがかえって恐ろしくて、それから逃れるために、ありとあらゆる手段を尽くすのだ」と言っている。

1.  He has hard work who has nothing to do.

(志子田光雄)