『ワラ一本で風向きはわかる』1 ワラはしばしばつまらぬものの象徴として用いられるが、そのワラが一本あれば、それを飛ばして風向きを知ることができる。その飛び方によっては、嵐の前兆さえ捉えることが可能なのだ。つまり、些細なことからでも、来るべき大事の暗示を得ることは可能である、というのがこのことわざの意味である。 これに相当する本邦の表現は『桐一葉落ちて天下の秋を知る』であろう。これはもちろん太閤秀吉の死と豊臣家の没落を詠んだものであるが、他の葉よりも早く落葉するアオギリの葉の落ちるのを見れば、秋の訪れを察することが出来ると季節を読み取ることわざとしても理解できる。 古代ローマの政治家・著述家のキケロは「ある兆候はある事件に先行する」と言い、スコットランド19世紀の詩人トマス・キャンベルは「やがて来る事件はその前に影を投ずる」と言っているが、常に前兆はあるものである。 しかし、ワラ一本で世の風向きを知るには経験がものを言うし、知っても行動に移さなければ知らないに等しい。平穏の中にあっても、絶えずこの「ワラ」の動向に意を注がなければならないであろう。 |