『よい道連れは一ばんの近道』¹

 英語で旅を意味する「トラヴェル(travel)」は中世英語で「苦しい旅をする」という「トラヴァイル(travail)」の変形である。これはさらに「苦しい努力」を意味する古いフランス語に源があるが、「トラヴェイル(travail)」は現代英語でも「陣痛や苦労」を意味しており、同つづりの現代フランス語の「トラヴァーユ(travail)」も同じ意味を持つ。さらに遡れば、拷問用の道具であった「三本のくい」を意味するラテン語に至るが、このような語源考から分かることは、往時、旅(トラヴェル)はいかに苦難に満ちたものであったかということである。

 大部分はただ足だけが頼りのこのような苦しい旅にあっては、愉快な道連れがあれば、一人旅の時よりも行程が短く感じられるというものである。『旅は道連れ』である。

 これとまったく反対に『一人旅する者は一番早く旅をする』²ということわざもある。旅は人生の行程の比喩で、妻子や邪魔な友人はいないほうが仕事をしやすいという意味であり、イギリス19世紀の作家キプリングの詩「勝利者(The Winners)」が出典。

1.  Good company on the road is the shortest cut.
2.  He travels the fastest who travels alone.

(志子田光雄)