『鯖雲の空と白粉を塗った女は長続きしない』¹ 鯖(さば)雲とは、その名の通りサバの背にある斑紋のような片雲で、秋の空によく 見られる絹(巻)積雲と呼ばれる雲である。普通5―13キロメートルの高度に生ずる上層雲であり、氷晶からできている不安定な雲であり、この雲が広がると天候の変化が近い。 白粉の歴史は5千年ほど前にまでさかのぼり、ギリシャ・ローマ時代に鉛白が用いられて以来白粉の成分は鉛であった。そのため白粉を塗り続けると鉛中毒と、さらに「おしろい下」に用いていた油脂による油やけ(いわゆる「おしろい焼け」)の危険性があった。(ちなみに、日本では白粉に鉛粉の使用が禁じられたのは昭和9年)。大抵、白粉を皮膚の美容のために用いて美しさを引き立てようとするときは、すでに「お肌の曲がり角」にきているわけであるが、さらに白粉を塗れば、このような害のために、素肌の美しさはたちまち失われてゆくことになる。 空も女も、表面に白いものが広がったら変化する兆しである、というのがこのことわざの意味。 (志子田光雄) |