『妻を迎える時は梯子を降りろ、友を選ぶ時には梯子を登れ』¹

 このことわざの趣旨は、要するに「嫁は下からもらえ、友は上から選べ」ということである。その視座は完全に男性側にあり、女房は自分より身分格式の低い家の娘をもらうべきであるという、いささか勝手な考えである。理由は、男は一家の主人面をしていても、所詮家庭の中心を占めて支配権を握るのは妻である。まして、その妻が夫よりも氏素性が良ければ、男はますます頭が上がらなくなるからであろう。

 これに対して、友を選ぶ場合には、自らの向上と出世のために、人格、識見並びに社会的地位など自分より上の者を選ばなければならない、というのである。

 本邦にも『婿は大名からもらえ、嫁は灰小屋からもらえ』、あるいは『婿は座敷からもらえ、嫁は庭からもらえ』ということわざがあるが、同趣である。

 女性の地位が向上した現在、このことわざは問題が多いが、女性の視座から「夫を選ぶ時は….」と言う場合、その後はどう続くのであろうか。

1.  Go down the ladder when you marry (or thou marriest) a wife, go up when you choose (or choosest) a friend.

(志子田光雄)