『まじめな人々に警戒せよ・・・』¹ 「あらゆる時代に、世界を破滅させたのは彼らだ」²で完成するフランスのことわざである。 この世は、一皮むけば、不正義、不公平、悪が横行している。それに対して人々が不平を言い、嘆き、怒りを覚えながらも生きているのは、自分の無力を認めてあきらめている場合もあれば、この世の姿であると悟っている場合もあり、 また次第に良くなるだろうと楽観的な考え方を抱いている場合もある。これが普通の人々の生き方である。 しかし、まじめな人はこれを黙認することができない。直ちに改革しようと行動に走る。その結果、社会に急激な衝撃を与え、ひいては自らをも滅ぼしてゆく。その例は歴史上幾多の一揆、動乱にみることができる。 原文の「まじめな」は serieux であるが、英語の serious に相当する。両語ともに「危険な」という意味もあることは示唆的である。 革命を経験したフランスに、「改革は危険だ」³ということわざがある。人々は revolution(革命)を好まず、evolution(漸進的変化)を望むのだ。 1. Méfions-nous des gens sérieux, 2. de tout temps, ce sont eux qui ont perdu le monde. 3. Il est dangereux d'innover. (志子田光雄) |