『愛は多くの欠点を覆う』1 しばしばこれに相当する日本の格言として『あばたもえくぼ』が挙げられるように、「ある人」が「他の人」を愛してしまえば、その「他の人」にどんなに欠点が多くあっても、「ある人」にはそれが全く気にならないか、むしろそれが「他の人」の長所に見えてくることもある、と解釈される。イギリスではすでに16世紀にはこのような意味で用いられていたふしがある。 同時に、「ある人」が「他の人」に対して(高貴な)愛の行為をなすとき、その「ある人」にどれほど欠点があっても、その愛の行為によって、「ある人」の欠点はまったく覆い隠されてしまう、という意味にも解釈される。 しかし、本来この諺は、新約聖書ペトロの手紙I,4章8節の「何よりもまず、心を込めて愛し合いなさい。愛は多くの罪を覆うからです(Love covers a multitude of sins.)」に由来するものであり、人は互に愛し合うことにより、愛は「ある人」自身の罪を覆うのではなく、「他の人」の罪と破れを覆うことができ、それはすなわち「他の人」を赦すことにつながる、という意味なのである。 (志子田光雄) |