『一月(ひとつき)楽しく過ごしたい者には温泉に行かせるがよい』 このことわざには続きがある。『一年楽しみたい者には結婚させるが良い、一週間楽しみたい者には豚を一頭殺させよ、いつでも幸福でありたい者には牧師にならせるがよい。』1 温泉での楽しみも一ヶ月が限度、結婚もお互いの欠点が見えないのは一年どまり、豚は一頭殺せば一週間は十分楽しめるし、罪からの救済を説く牧師になれば心は常に安らかであるというものである。 このことわざにはいくつかのヴァリエーションがある。その一つに『一日幸せでいたい者には床屋へ行かせよ。一週間ならば妻を娶らせよ。一ヶ月なら新しい家を買わせよ。一年ならば新しい家を建てさせよ。一生ならば正直者とならせよ。』2とある。床屋に行けば、一晩寝れば形は崩れるが、それまでは満足。結婚は、少々厳しい見方であるが、一週間は幸福な思いに浸れる。新築の家を買っても自分の好みが取り入れられていないので一ヶ月で不便を感じるようになる。だからといって家を新築しても嬉しいのは一年くらいで、あとは慣れてしまって特に満足を感じなくなる。何にもまして正直であれば、一生幸せというものである。『正直は最上の策』3だからである。 |