『すべての月は好天の二月を呪う』1
ことわざの世界は大抵太陰暦である。そのため現行の太陽暦と少しずれる場合もあるが、一般に「二月は切り裂く」2という表現があるように、その寒さは身を切るように厳しい。そして「二月は黒か白かで溝を満たす」3とあるように、荒れ模様の天候が多く、雨か雪で溝が一杯になるというのである。しかし、「二月の雨は納屋をいっぱいにする」4ということわざが示すように、イギリスやフランスでは二月の雨は収穫を約束するので、好天はむしろ嫌われる。 二月は英独仏語でそれぞれFebruary、Februar、fevrier である。古代ローマでは、この月の十五日に行われたルベルクスの祭りに生贄として捧げられた山羊の皮で皮紐が作られ、二人の貴族出の青年に与えられる。彼らはそれを手にして城壁の周りを駈け回る。その間女たちは皮紐で打たれたいと争うが、打たれれば不妊が治り、安産になると信じられていたからである。この皮紐をfebrua(清め)と呼び、それにちなんでこの月をFebruarius(清めの月)と名付けた。古代ローマ暦では一年の最後の月、従って二十八日と半端な日数となっている。 |