《5日目:昭和50年3月22日 幌内線》


 網走からの「大雪5号」は札幌目指して普段どおり走っていた、のではなかった。寒くて目を覚ます。旭川を過ぎたようで車窓を電柱が横切る。
とても寝てはいられない。どうもSGが故障しているらしい。春とはいえ北海道の3月、暖房が切れるのは困る。それでも何とか頑張って岩見沢に
着く。
 今日は幌内線。セキ列車で有名だ。キハ22に乗って三笠へ。この駅、配線がちょっと変わっている。分岐駅でありながら幌内へ向かう支線がホ
ームの手前で分かれるのだ。ということは下り貨物はいったんバックしてから発車することになる。なぜだろう?敷地がなかったのか?
 朝に幾春別行の下り貨物が1本ある。運炭路線に共通して言えることはヤマに向かって行く「下り列車」に対して「上り勾配」なのである。
石炭満載の上り列車は坂を下るようになっている。うまくできている。
ということで駅から少し歩いたところで待つ。なんと列車は単機。気勢をそがれて駅に戻る。
   
 三 笠

 午前中は幌内支線でやることにして歩き出す。全線で2.7キロしかないから歩いてもどうってことはない。ガイドによると正面がちにしか撮れな
いという。一日中同じカマが行ったり来たりする珍しい路線だ。歩いてみると確かにどこで撮っても同じような絵になる。列車が来そうな時間に
なったので線路端に寄って撮影。
   
 三笠−幌内
   
 幌 内

 幌内の構内が見えてきた。セキ車が列をなして止まっている。駅舎は古びて小さい。もともと貨物が主体で旅客収入などおまけのようなものだ
ったのだろう。線路はこの先、ヤマまで伸びている。こちらは入換のキューロクをスナップして休憩。上り列車が煙を吐いたのは発車だけであとは
無煙でゴロゴロ転がって行った。下りをもう1本撮ることにして今来た線路を戻る。途中で下りを待ち受けた。まずまずの手ごたえ。
今来た道を歩くのも何なのでバスに乗る。運賃は140円くらいだったと思う。
 三笠に戻って来て昼食。駅前のラーメン屋に入ったら何か変だ。椅子に座ると自然に体が傾く。建物が斜めになっているらしい。これも炭鉱のせ
いだろうか?午後は上りの発車をねらうことにして構内のはずれに場所を決める。煙を期待して多くのファンが集まっている。土手の斜面には残
雪があった。
 陣取ってから面白いことに気がついた。上り貨物の組成をするために一度、入換で目の前までカマがやってくるのだ。それも満載のセキだから
煙がすごい。二度楽しめるとは得をした気分だ。本番の発車はさらにすごい。長旅の疲れも忘れて夢中になれる。
さすがに道央は暖かい。1枚脱いでちょうどいいくらいだ。猛煙にさらにヒートアップする。なめくじの牽くセキ列車。これはこたえられない。

 三笠−幌内
   
 三 笠

 時代が石炭産業の終焉を告げようとしているのにこの迫力はどうだろう。最盛期を思わせる盛況ぶりだ。ヤマが斜陽だとはとても思えない。
たった2、3本の撮影だったが充分に堪能できた。満足して岩見沢行に乗る。


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