《4日目:昭和50年3月21日 石北本線》


 夜行急行「大雪5号」は遠軽を出て旭川に向かっている。疲労もあって眠いのだが白滝で降りなければならず、寝過ごしはできない。
雪も降らず定時で動いている。車内はファンも多く、寝ていたり話をしていたりさまざま。
白滝が近づいて降りる支度をする。上川下車は珍しくないのだろうが、白滝で降りるファンは少ない。ホームには残雪がある。数人で待合室に入
った。ストーブが点いていて暖かい。
 下りまで2時間ほどある。交換は地図上で2つ隣の上川なのだが手前のこの駅で降りると待ち合わせがこれくらいになる。というのは白滝−上川
間が37キロもあってその間で石北峠を越えるからだ。そんなわけで待合室でぼんやりと待つ。
ただ救いはあった。この間に下りの貨物がある。機関車は雑誌で見る限りでは北見区持ちだ。ただし12月から運用が変わってDLになったという
うわさだったから望み薄ではある。常紋で会ったファンによるとDL化は遅れている、ということだったが。その下り貨物の到着時刻が近づい
た。ただ待合室にいても、と外に出てみる。遠くからライトが見え始めた。
 よく見るとライトは2つだ。とするとやはりDLか、とちょっとがっかり。構内に入ってきて明かりに照らされたのは確かにDD51だった。し
かし赤い機関車の後ろからスチームが漏れている。目の前を通過する姿に驚いた。次位にD51が付いている!ダメでもともと、と思っていたから
余計うれしくなってしまった。やはりDL化は遅れていたのか。待合室にいた同行者に声をかけたが反応なし。ホームで寒さも忘れ、ストロボを
点けた。暗い構内でうまく写ってくれたか。

 白 滝

 さて下りの「大雪5号」である。乗り込んだものの席はない。あったとしても「上川折り返し」で埋まってしまったのだろう。仕方なくすきま
風の入ってくるデッキでしゃがみこむ。丸瀬布、瀬戸瀬と遠軽が待ち遠しい。
まとまった睡眠時間がなく、疲れもたまってきていたが風が冷たいホームに降り立つと頭がすっきりする。朝の下り貨物を駅でやってからキハ22
に揺られ、常紋を目指す。山登りの途中から雪が舞い出した。信号場は吹雪だった。路盤に積もっていないことから今になって降り始めたのだろ
う。風も強く、条件は昨日より良くない。来てしまったのだからしょうがないと割り切って撮影の用意をする。まずは朝の交換から。
 吹雪の中、下まで降りていく気にはなれず構内の土手から上り列車をねらう。汽笛が聞こえてきたが煙が先に来る。昨日と同じでは、と気持ちが
盛り上がらないままシャッターを切る。きれいな写真ではないが冬の北海道らしさが表れてこれはこれでよかったと思う。交換も撮れていくらか
気分がよくなった。(後から思えば現役当時の写真など、どれも貴重なのだ。)

 常 紋

 常 紋

 雪が降るのは悪くないが、風がやみそうにない。それならどうしようか?今夜も「大雪」に乗らなければならない。とすれば網走に行きやすいと
ころでなくてはならない。ダイヤを見ながら考え、美幌に決めた。ここならC58の貨物列車が撮れる。キハ22に揺られて峠道を下りて行く。雪は
途中で止み、美幌は雨。何とか線路端を歩いて場所を決めた。ガイドも見ておらず、まして土地勘もないがまあまあいいポイントだ。

 美 幌

 駅の方向に戻り、構内のはずれに腕木式信号機を見つけた。これをアクセントにして構図を決める。やってきたのはデフにJNRマークが付いた
C58 33。人気のカマだ。

 美 幌

 道東での撮影を終えた。これから道央に戻ることになる。ディーゼルで網走に着いた。「大雪」が発車するホームへ向かったら跨線橋の登り口に
しっかり鎖が張ってあった。北海道は列車別の改札が徹底している。
 発車3時間前位から改札口に荷物が並び始めた。さすがに出足が早い。自由席の定員と荷物の数を比べればあせる必要がないのはわかるが、こ
こまでやってきたのは確実に席を確保するためだからこちらも荷物を置く。夕食の時間だが盗難が心配だ。同行者と話し合い、交替で食事に出る。
何を食べたのかはっきりしない。駅前でラーメンだったかそれとも駅そばだったか、また網走に行かないと記憶が戻らない。
 暗いホームの向こう側で「大雪」が入線している。ようやく改札が始まった。この列車、ここから北見まではC58が牽く。前のほうでさかんに
ストロボが焚かれている。そこまでする気にはなれず車内で待つ。発車の汽笛とドラフトを聞いたような覚えがあるが北見や遠軽の発車は夢の中。



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